イスラムの友達
これも、ESLのお仲間の思い出であるが。
夏休みのシーズンになると、ESLのシステムも変わって、場所はオタワの中心街で一本化され、勿論顔ぶれも新しくなった。
そこで親しくなったエジプトの若い女性は、住まいが近いばかりではなく、お互いの主人が同じ研究所に所属していたこともわかり、共通の話題もぐっと広がった。
その頃オタワの市内では、私も日常的に運転していたので、朝はハナという名前の彼女の自宅に寄って、彼女と共にESLへ行くという習慣が出来上がっていった。
彼女は、様々なイスラム系の人に出会うと親しげに話しを交わす。
相手の国は、ヨルダンだったりイラクだったりするのだが、言葉は大体共通なのだという。
それぞれが方言くらいの違いで、その中でエジプト弁は標準語に相当するのだ、と彼女は言っていた。
ある時、「イスラムの仲間で子供連れの人が近くに住んでいるのだけれど、その人も一緒に車に乗せて貰えないだろうか」と頼まれた。
英会話のクラスに、毎回二人の幼児を連れてくる若い女性がいて、ちょっと人目を引く存在であったのだ・・。
それからは、その三人の親子も迎えに行く様になって、若干教室に着く時間が遅くなる様になった。
着いた時には駐車場は既にふさがっていて、やむなく路上駐車という状態が続いていたのだが、イスラム社会ではお互いに助け合うのが当然なのであった。
ある日、帰ろうと思って車の置き場所に行ってみると、私の車が影も形も無い・・。
どうやら、レッカー車で運ばれたらしい・・。
ハナは心配して一緒に付いてきてくれたが、英会話教室に通っている様な外国人二人の事である。本当に困ってしまった。
たまたま近くにガソリンスタンドがあったので、とにかく相談してみた。余程、途方にくれているのが伝わったのだろう。
運ばれた車の、行き先は見当がつくからと、何とそこまで車で連れて行ってくれたのだ。ハナが一緒で、本当に心強かったのだが。
そして又、イスラムのお仲間との通学が続いたのだが、ある日その母親が怒りをぶつけてきた。
担当の教師に、子連れで来るのは止める様に言われたのだそうだ。
「私の子供は、いつもおとなしくて、皆の邪魔なんてしないのに・・。子供を連れてくるなと言われたら、私はどうやってここに来たらよいというのだ!」
フランスやイギリスで起こる、イスラム圏からの移住の人々との摩擦が、時々ニュースになっているけれど、その度に私はその若い母親を思い出す。
一度、我が家でハナ夫妻や研究所の方を招いて、ホームパーティーをした事があった。
イスラムの人々は豚肉を食べないと聞いていたので、気をつけて準備した筈なのに、うっかりメニューの中に交えてしまったハムサラダを、ハナのご主人が綺麗にハムだけ脇に寄せて食べていたのに気づいて、私は宗教や常識の違う世界で生活する彼らの困難さを、つくづくと感じたのだった。
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