ブーゲンビリヤ
ブーゲンビリヤの鉢を贈ってくれた人が居た。あの赤紫が一番好きな色、と何かで私が言っていたのを、覚えていてくれたのだ。
丁度今のマンションに越したばかりの頃で、真新しい簡素なヴェランダにとてもよく映えた。それが、三年前の春。
私は、ヴェランダ中をこの色で埋め尽くしたい位に気に入ってしまったのだが、毎週上京して留守がちな我が家としては、二鉢お花屋さんから買い求めて来て、仲間に入れた程度で満足して、何度かの盛衰を楽しんだ。
お花に関して無知な私も、ブーゲンビリヤには何となく執着してせっせと水遣りに励んだのだが、やはりヴェランダでの冬越えは難しい様であった・・。
ブーゲンビリヤをプレゼントされた秋、私はギリシャのミコノス島を訪れた。
エーゲ海に浮かぶこの島には、白亜の家々が立ち並び、道端には様々な色の花をつけたブーゲンビリアの木々が溢れていて、まるで絵本の世界の様であった。
何年か前に旅行したポルトガルにも、この木が家々の白壁を彩どっていた事を思い起こすと、どうやらこの木は地中海あたりの乾燥した地の植物であるらしい。
あれから、春になると毎年新しく買い求める我が家の鉢達も、私が仕事で不在の日が続いて帰宅すると、思いのほかたくさんの蕾を大きく膨らませていたりする・・。
二年前の秋、主人と1週間程海外に出かけて帰宅した時等、ヴェランダの一角があの赤紫色で占められていて、感動した。
昨年ヴァージョンの三鉢は、最初から少し大きめの鉢に植え替えた為か、枝がどんどん成長して花の数は余り多くは無かったが、葉っぱはいつまでも残っていて、とうとう暖かかったこの冬を乗り越えたのだ。
まるで、昔読んだO・ヘンリーの「最後の一葉」の様に、主人と残り少なくなった葉っぱの行方を、毎朝眺めていたのだが。
ある日、葉っぱの数がどうも減った様だな、と思ってみていたら、普段は植木鉢には手を出さない主人が、ちょっと出来心で水を注いだらしい。
ブーゲンビリヤは、乾燥した土地の木だから水は嫌いなのだろう、と私達はそれから暫くそっとしていたのだが・・。
昨日の朝、「芽が出てきたよ・・。」という主人の一声!
眼鏡をかけてヴェランダに出てみると、1.5メートル位に伸びた数本の枝の節々に、緑とも茶ともつかない彩りの、小さな葉っぱ達が沢山息づいていたのだった。
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